マイケル・ブレッカー 『ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック』 Michael Brecker “Nearness of You: The Ballad Book” 060


マイケル・ブレッカー、パット・メセニー、ハービー・ハンコック、チャーリー・ヘイデン、ジャック・ディジョネットとメンバーの顔ぶれが豪華。まさに、オールスターで作られるべくして作られた名盤。でも内容はというと……気負わず、ゆったりとしたバラード集なのが心にくい。シンガーソングライターの大御所ジェームズ・テイラーのボーカル曲#2 “Don’t Let Me Be Lonely Tonight”、#5 “The Nearness Of You” 「ニアネス・オブ・ユー」は、ジャズボーカルっぽくはないですが、やはり味があります。こういう懐の深いアメリカの大陸的な哀愁は、たまらなく魅力的です。

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チャーリー・ヘイデン&パット・メセニー 『ミズーリの空高く』 Charlie Haden & Pat Metheny “Beyond The Missouri Sky (Short Stories)” 059


チャーリー・ヘイデンのベースとパット・メセニーのギターの織り成す静謐な雰囲気が、味わい深い。二人に爪弾かれる弦の音色に包まれ、穏やかな情感と伸びやかな開放感に癒されます。特に秀逸なのは、ヘイデンの息子作曲の#13 “Spiritual”。やわらかに流れ、消えゆく音色の浮遊感、魂が解き放たれます、ミズーリの空高く……。

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上原ひろみ 『アナザー・マインド』 Hiromi “Another Mind” 058


TVドキュメンタリー番組「情熱大陸」で彼女が取り上げられ、キリン「モルトスカッシュ」、YAMAHAなどのTVCM、「AERA」の表紙を飾るなど、もはや人気がジャズ界にとどまらない勢い。リアルタイムでこんな才能に出会えるなんて嬉しいかぎり。全曲、彼女のオリジナル。「超絶技巧を駆使するには自作曲じゃなきゃ」と語る彼女の頼もしさ。バークリー在学中に録音されたこのデビュー盤は、#1 “Xyz” からとんでもないジャズが始まります。まるでプログレッシブロックをジャズのフォーマットでやっているよう。デジタルな#5 “010101 (Binary System)” をはじめ、多様な音楽性を内包したジャズは、まったくもってユニークかつ斬新。髪の毛を逆立て、一心不乱にピアノを弾きまくりますが、天真爛漫な笑顔も見せてくれる新世代女性ピアニスト。これからが本当に楽しみ。(※本文は2004年執筆)

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大西順子 『WOW』 Junko Onishi “WOW” 057


アンニュイな表情に惹きつけられる優美なジャケット。でも、その演奏はパワフルでダイナミック。大西順子はこのデビュー作でいきなりスイングジャーナル ジャズ・ディスク大賞 日本ジャズ賞に輝きます。このアルバムの半分は彼女の作曲。その他は、セロニアス・モンクやオーネット・コールマンのクセのある楽曲を取り上げるなど、新人でありながらすでに大物の風格を漂わせています。のびのびとスケール感のある演奏は、日本人であること、女性であることを飛び超えて、ジャズの極みへ昇っていきます。

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秋吉敏子 『トシコズ・ピアノ』 Toshiko Akiyoshi “Toshiko’s Piano” 056


1953年、ノーマン・グランツ率いるジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック(JATP)の公演で来日していたオスカー・ピーターソンが、クラブで一人の女性ピアニストを見出します。彼女の名は、秋吉敏子。数日後、JATPのメンバーのリズムセクションをバックに、東京で彼女の演奏が録音されることに。本場の超一流ジャズマンをバックに緊張するのは無理もなく、数曲で「もうできない」という秋吉を休憩させ、スタッフは励まします。休憩後は吹っ切れたのか一転してノッてくる。まるでバド・パウエルのように。このアルバムには、前半の少し萎縮した様子と、後半の奔放な演奏がドキュメントされています。別に演奏にミスがあったり、上手だったりという技術的なことではなく、気持ちの入り方ひとつでこうも違うのかと、ジャズの不可思議さを思います。この時の録音は、デビッド・ストーン・マーチンのオリエンタルなイラストのジャケットで、Verveレコードからアメリカで発売され、ダウンビート誌で3つ星の評価を受けました。一人の日本人女性ピアニストがジャズの本国で認められるという歴史的な偉業を成し遂げたのでした。

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