秋吉敏子 『トシコズ・ピアノ』 Toshiko Akiyoshi “Toshiko’s Piano” 056


1953年、ノーマン・グランツ率いるジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック(JATP)の公演で来日していたオスカー・ピーターソンが、クラブで一人の女性ピアニストを見出します。彼女の名は、秋吉敏子。数日後、JATPのメンバーのリズムセクションをバックに、東京で彼女の演奏が録音されることに。本場の超一流ジャズマンをバックに緊張するのは無理もなく、数曲で「もうできない」という秋吉を休憩させ、スタッフは励まします。休憩後は吹っ切れたのか一転してノッてくる。まるでバド・パウエルのように。このアルバムには、前半の少し萎縮した様子と、後半の奔放な演奏がドキュメントされています。別に演奏にミスがあったり、上手だったりという技術的なことではなく、気持ちの入り方ひとつでこうも違うのかと、ジャズの不可思議さを思います。この時の録音は、デビッド・ストーン・マーチンのオリエンタルなイラストのジャケットで、Verveレコードからアメリカで発売され、ダウンビート誌で3つ星の評価を受けました。一人の日本人女性ピアニストがジャズの本国で認められるという歴史的な偉業を成し遂げたのでした。

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キース・ジャレット 『ザ・ケルン・コンサート』 Keith Jarrett “The Koln Concert” 055


ソロピアノ完全即興による1975年、ドイツのケルンコンサートのライブ盤。26分もある#1 “Koln, January 24, 1975 Part I” は以前、車のCMにイントロ部分が使われていました。美しいメロディーとドラマチックに展開する構成、これはひとつの奇跡でしょう。ECMレコードらしく透き通るような響きのある録音も印象的。どこまでも続いていくような壮大なグルーブ、即興にきらめくメロディー。ひとつのコンサートの記録が、永続的な輝きと感動を伝えてくれます。限りなく美しい名盤。

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セロニアス・モンク 『セロニアス・ヒムセルフ』 Thelonious Monk “Thelonious Himself” 054


時を止めてしまうような沈黙と、とつとつと発せられるピアノの響き――おそらくあらゆるピアニストの中で、最も独創的なピアニストではないでしょうか。一聴すれば、「セロニアス・モンク」というその名前と共に忘れることができません。#7 “’Round Midnight” 「ラウンド・ミッドナイト」は彼の作曲中、最も知られたスタンダードですね。演奏中に踊り始めたり、普段はとても寡黙だったりと、その人となりもユニークだったようです。よくピアノの習い始めに「卵を持つように(手のひらを丸く楽に)弾いて」などと言われますが、モンクは指をピンッとまっすぐ伸ばしてかなりの力みよう。「俺流」、素敵です。

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ビル・エヴァンス 『アローン』 Bill Evans “Alone” 053


ビル・エヴァンスのピアノをとことん堪能できるソロ作品。独りで紡ぎだされるメロディーは、トリオより心なしか流麗に、くっきりと浮かび上がります。#1 “Here’s That Rainy Day” 「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ」など美しい印象が鮮明で、特に14分半に渡る#5 “Never Let Me Go” 「ネバー・レット・ミー・ゴー」のリリカルに豊かなニュアンスとドラマティックな曲想をもつ演奏は秀逸。1970年代はソロピアノブームとなりますが、チック・コリアやキース・ジャレットに先駆けての長尺なソロピアノ・インプロビゼーションは、何だか嬉しくなります。

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リー・モーガン 『リー・モーガン Vol.3』 Lee Morgan “Lee Morgan Vol.3” 052


天才トランペッターのクリフォード・ブラウンの早すぎる死を悼んでベニー・ゴルソン(ts)が作曲した#3 “I Remember Clifford” は、しっとりとしたメロディーが心に沁みるレクイエム。このアルバムの全曲、ゴルソン作曲。この名演を残したもう一人の天才トランペッターのリー・モーガンも若くして亡くなることに……。

ある雪の日、ライブの休憩中に彼と愛人ヘレンが口論になった末、一発の銃声。前のめりに倒れ込んだリー、一瞬の自失状態から覚めたヘレンは泣き叫んでいます。彼女が銃で撃ってしまったのです。雪のため遅れて到着した救急車でなんとか病院へ運ばれましたが、彼は帰らぬ人となってしまいました。

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