ハードボイルド気分でおすすめしたくなる日本のジャズの金字塔『Blow Up』。70年代日本のジャズの一つの到達点と言っても過言ではないでしょう。緩急自在のドラマティックな展開、活気みなぎる迫力の演奏を収録したこのオリジナリティ溢れるアルバムは、1973年度 スイングジャーナル ジャズ・ディスク大賞 日本ジャズ賞に輝きます。特に#3 “Blow Up” 、「無茶苦茶カッコいい」の一言に尽きます。ぶっちぎりなスピードにたわむ鈴木勲のべース弦、その旋律が華やかに跳ね回る菅野邦彦のピアノ、繊細かつ大胆に炸裂するジョージ大塚ドラムス。嗚呼、この三位一体の弾丸に魂を打ち抜かれるカタルシス!
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タグ: 菅野邦彦
鈴木勲 『ブルー・シティ』 Isao Suzuki “Blue City” 165
あの傑作『Blow Up』に続く鈴木勲のリーダーアルバム。#3 “Play Fiddle Play” では演奏にあわせ声でハミングします。声帯もまた楽器。弓で弾かれた弦の音色と重なりあう、その響きの味わい深さ。前作に続き菅野邦彦の鍵盤さばきも軽やかに冴え、若き渡辺香津美のギターが憂いをおびた色彩を添えます。ジャズの格好良さを随所に感じられる鈴木勲のクリエイティビティにしびれます。
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鈴木勲 『ブロー・アップ2』 Isao Suzuki “Blow Up 2” 192
日本のジャズ史上に燦然と輝く金字塔『Blow Up』。あれから30年、まさかの続編として2003年に制作されたアルバム。メンバーは鈴木勲、菅野邦彦、ジョージ大塚の黄金トリオに鈴木勲『Black Orpheus』などの名盤に参加している盟友山本剛、そして「鈴木勲とOMA SOUND」の若手たち。タイトルを渋い深みのある声で響かせると、雄大な風景の広がるような#2 “What A Wonderful World” 「この素晴らしき世界」で幕を開けます。この曲で鈴木勲は古楽の擦弦楽器であるヴィオラ・ダ・ガンバを幽玄に奏で、そして後半は一転してなんとピアノの菅野邦彦とエレクトリックピアノの山本剛が軽快に競演します。多くの曲で菅野と山本のダブルピアニストが同時に弾く豪華な布陣。#5 “My Foolish Heart” 「マイ・フーリッシュ・ハート~愚かなりし我が心」はヴィオラ・ダ・ガンバとベースに山本剛のピアノだけというシンプルな美しさも、この豪華な演奏に挟まれるとより引き立ちます。終盤の#8 “Nardis” 「ナーディス」は新しい世代のフレッシュな演奏で、聴きどころ満載の存分に楽しめる内容となっています。しかしながらあの名曲 “Blow Up” を再録して欲しかったと言うのは野暮でしょうかね。
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菅野邦彦 『慕情』 Kunihiko Sugano “Love Is A Many Splendored Thing” 197
あなたの最も好きなアルバムは何ですか?――ここに紹介するのは「天才クニ」 「ピアノの魔術師」などと謳われるジャズピアニスト菅野邦彦の『慕情』。1974年に開催されたスリー・ブラインド・マイス(TBMレーベル)主催のコンサート「5デイズ・イン・ジャズ」での録音盤です。1曲目はアルバムタイトルにもなっている#1 “Love Is A Many Splendored Thing” 「慕情」。ぶっきら棒に突き放したような意表をつくピアノのイントロ。ナイーブな音とからみ合いながらメロディーが表われ、徐々にスピードを増す高揚感に陶酔します。もの悲しい流れのまま#2 “Autumn Leaves” 「枯葉」へ。両曲とも大胆な鍵盤の打音による「緊張」と繊細な美しい旋律による「弛緩」の絶妙なコントラストが冴え、ピアノ弦をはじく「枯葉」の最後の一音も印象深い余韻を残します。一転して#3 “Blues For Wyntons Kelly” はウィントン・ケリーに捧げたオリジナル、#4 “Pardid” はともに軽快に跳ねまわるピアノが聴け、ここでもまた彼の大きな魅力が発揮されています。丁寧で着実なベースとドラム、そしてコンガとの息もぴったり。録音も力強い迫力を伝える音質。神がかった芸術性を感じさせる本作は菅野邦彦の最高傑作とも言われますが、私の最も好きなジャズ名盤でもあります。
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