菅野邦彦 『慕情』 Kunihiko Sugano “Love Is A Many Splendored Thing” 197



あなたの最も好きなアルバムは何ですか?――ここに紹介するのは「天才クニ」 「ピアノの魔術師」などと謳われるジャズピアニスト菅野邦彦の『慕情』。1974年に開催されたスリー・ブラインド・マイス(TBMレーベル)主催のコンサート「5デイズ・イン・ジャズ」での録音盤です。1曲目はアルバムタイトルにもなっている#1 “Love Is A Many Splendored Thing” 「慕情」。ぶっきら棒に突き放したような意表をつくピアノのイントロ。ナイーブな音とからみ合いながらメロディーが表われ、徐々にスピードを増す高揚感に陶酔します。もの悲しい流れのまま#2 “Autumn Leaves” 「枯葉」へ。両曲とも大胆な鍵盤の打音による「緊張」と繊細な美しい旋律による「弛緩」の絶妙なコントラストが冴え、ピアノ弦をはじく「枯葉」の最後の一音も印象深い余韻を残します。一転して#3 “Blues For Wyntons Kelly” はウィントン・ケリーに捧げたオリジナル、#4 “Pardid” はともに軽快に跳ねまわるピアノが聴け、ここでもまた彼の大きな魅力が発揮されています。丁寧で着実なベースとドラム、そしてコンガとの息もぴったり。録音も力強い迫力を伝える音質。神がかった芸術性を感じさせる本作は菅野邦彦の最高傑作とも言われますが、私の最も好きなジャズ名盤でもあります。


1. Love Is A Many Splendored Thing
2. Autumn Leaves
3. Blues For Wyntons Kelly
4. Pardid


菅野邦彦 (p)
小林陽一 (b)
高田光比古 (ds)
小川庸一 (conga)
Recorded 1974