枯淡の味わい。44歳で亡くなったビリー・ホリデイ、晩年の名唱。25歳頃の名盤『奇妙な果実』のまっすぐ届く艶のある高い声とは一変、しわがれた渋い声で歌うしっとりとしたバラッド集です。彼女たっての希望で起用されたレイ・エリスによるストレングスを多用した優美なアレンジも秀逸。ビリー・ホリデイはジャズ歌手としての成功と裏腹に、人種差別、麻薬などに苦しんだ波乱万丈の人生を送ったことでも知られます。本作の静かに淡々と感情をかみ締める歌声に、人生の達観した境地をどうしても感じざるをえません。私はジャズボーカルで1枚選べと言われれば、このアルバムを挙げるでしょう。じっくりと心の奥底のささやき声に耳をかたむけるような、そんな名盤です。
「ただ感じとればよいのだ。その感じたものを素直に歌えば、聞く人は何かを感ずるのである」 ビリー・ホリデイ
1. I’m A Fool To Want You
2. For Heaven’s Sake
3. You Don’t Know What Love Is
4. I Get Along Without You Very Well
5. For All We Know
6. Violets For Your Furs
7. You’ve Changed
8. It’s Easy To Remember
9. But Beautiful
10. Glad To Be Around
11. Over The Rainbow
12. The End Of A Love Affair
Billie Holiday(vo)
Ray Ellis(arr,conductor)
Recorded 1958
ビリー・ホリデイ もう一枚の名盤
Billie Holiday (1939,44)
黒人女性としての哀切、「奇妙な果実」の名唱