マル・ウォルドロン 『レフト・アローン』 Mal Waldron “Left Alone” 037


#1 “Left Alone” 「レフト・アローン」は、ジャズシンガー、ビリー・ホリデイが作詞、晩年に伴奏を勤めた彼が作曲したもの。ここでは亡きビリーの代わりに、ジャキー・マクリーンがすばらしい演奏を聴かせます。数年前マル・ウォルドロンの来日公演でのこと、彼はヘビースモーカーらしく、ベースソロなど演奏の合間に、ゆっくりとした動作で「カッ、チッ」とライターで火をつけ、細長い煙草を喫んでいました。そのたたずまいからは、モールス信号とも形容される彼独特のジャズそのものが発せられているようでした。くゆらせていた煙のように逝ってしまったのは、その公演の数ヵ月後のことです。このアルバムの沈鬱な美しさに魅せられた方は、ソロピアノ作品『All Alone』に耽溺されては如何でしょう。

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チャーリー・ミンガス 『直立猿人』 Charles Mingus “Pithecanthropus Erectus” 068


「ピテカントロプス・エレクタス」、邦題は「直立猿人」とインパクトのあるタイトル曲#1は、「人類の進化と滅亡」というテーマをフリーキーな即興演奏で野性的に表現しています。ジャッキー・マクリーン、J.R.モンテローズ、マル・ウォルドロンなどのメンバーもそれぞれ強烈な個性をぶつけ合うように発揮していますが、一方で全体的な一体感もあるという逆説的な演奏はユニーク。調和と不調和のせめぎあう緊張感と噴出するようなジャズの生命力に魅せられます。

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エリック・ドルフィー 『アット・ザ・ファイヴ・スポット VOL.1』 Eric Dolphy “Eric Dolphy At The Five Spot, Vol.1” 075


調子をはずしたかのような音が、危ういバランスを保ちながら、神出鬼没の浮遊を繰り返す――エリック・ドルフィーの演奏は、尋常ではない迫力で、潜在的な音が一気に噴出し、とどめようがないよう。ブッカー・リトル(tp)やマル・ウォルドロン(p)などメンバーも、この奇跡的な邂逅にも臆するところなく、肝の据わったプレイを披露しています。

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ジャッキー・マクリーン 『4,5&6』 Jackie McLean “4, 5 and 6” 093


『4, 5 & 6』――数字が並んだちょっと変わったタイトルは、カルテット、クインテット、セクステット……つまり、曲ごとに編成を変えることを表わしています。このコンセプトももちろん楽しめますが、アルバムの冒頭からジャッキー・マクリーンのアルトの音色にどうしても惹き付けられてしまいます。ジャッキーのアルトには、心をダイレクトに震わせるような情感豊かな響きがあるのです。

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マル・ウォルドロン 『オール・アローン』 Mal Waldron “All Alone” 181


はぁ……、悲しい。もう1曲目から悲しすぎます。涙に音があるならきっとこんな音でしょう。本作マル・ウォルドロンの全曲オリジナルによるピアノソロ アルバムは、どっぷりと浸りたくなるような哀愁に溢れ、とつとつとしたピアノが心の琴線に触れてきます。聴くときはハンカチのご用意を……。

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