夏の日差しになれば、やはりこのサウンド――大傑作『Return To Forever』に続くセカンドアルバム。躍動感あふれるリズム陣の巻き起こす風にチック・コリアのエレクトリックピアノ、ジョー・ファレルのフルート、フローラ・プリムのボサノバ風ヴォイスがのります。メロウな(やわらかく美しい)聴き心地のよさがありながら、陶酔するような高揚感もあるのが素晴らしい。そして#6 “Spain”。スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴの「アンフェラス協奏曲」を基調としたチック・コリアの代表曲です。甘く爽やかな飲み口とすっきりとキレのあるシャンパンのような名曲。軽く酔えます。
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カテゴリー: フュージョン名盤
ジャコ・パストリアス 『ワード・オブ・マウス』 Jaco Pastorius “Word of Mouth” 184
ジャコ・パストリアスのベーストラックに、各プレイヤーの演奏を多重録音していくというユニークな実験的作品。多様で豊かな音楽的創造が、一枚のアルバムとして見事に結実しています。楽園的な明るさをもつ#3 “Liberty”、ビートルズの#5 “Blackbird” 「ブラックバード」、子供たちとの歌声も飛び出す#7 “John And Mary” も楽しい。もちろん随所でナイスなベースプレイも聴けます。
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ハービー・ハンコック 『V.S.O.P. ニューポートの追想』 Herbie Hancock “V.S.O.P.” 188
1976年ニューヨークでの「ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル」。6月29日は「Retrospective of the Music of Herbie Hancock」と題されたハービー・ハンコックの音楽を回顧するイベント。60年代マイルス・デイビス クインテット、70年代前半の三管編成、そして当時のヘッドハンターズと、メンバーを入れ替えての3セットのステージ。マイルス・デイビスは病気療養中のためフレディ・ハバードが代役を務め、一回限りのはずがその後もこのメンバーで、「V.S.O.P. (Very Special One-time Perfomance) クインテット」として活動することになります。もちろん本作での注目すべきはこの「V.S.O.P.」のセットなのでしょうが、全編聴き応えあり。個人的なオススメは、#8 “Hang Up Your Hang Ups”、#9 “Spider” のワゥ・ワゥ・ワトソンとレイ・パーカー・ジュニア。左右からのエレキギターに、ヤラれます。
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マイルス・デイビス 『ドゥー・バップ』 Miles Davis “Doo-Bop” 189
マイルス・デイビスのラスト・アルバム――制作中にマイルスが亡くなってしまったので、ラッパーのイージー・モー・ビーが収録された音源をもとに完成。全編ヒップホップのリズムにマイルスのトランペットがのり、#2 “Doo Bop Song”、#5 “Blow”、#7 “Fantasy” はなんとラップナンバーです。「Be-Bop(ビバップ)」と「Doo-Wop(ドゥーワップ:黒人のスキャットもするコーラススタイルのポップス)」で「Doo-Bop」。この掛け合わせのインパクト。引退から復帰した晩年のマイルスが、ポップスターのようにトランペットで「歌う」演奏もまた魅力的。彼は成熟の先にあるただ一つの「完成」では決して満足せず、常に時代の流れに向きあい「変化」を追い求めたのでしょう。
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