驚くほどにニュアンスに富むピアノ。アート・テイタムは視力がほとんどなかったそうですが、聴力をたよりに鍛えた驚異的なテクニックは、多くの音楽家から注目され賞賛を得ていたようです。鍵盤からよどみなく流れ出す旋律と音色。この流麗な繊細さと低く太く振動するベン・ウェブスターの男性的な響きとのコントラストが、心に深い印象を残します。#1 “Gone With The Wind” 「風と共に去りぬ」、#4 “My One Only Love” 「マイ・ワン・オンリー・ラブ」、#5 “Night And Day” 「夜も昼も」、#6 “My Ideal” 「マイ・アイディアル」など親しみのあるスタンダードをはじめ、選曲も抜群。静かにゆさぶられる狂おしさ、胸の内に溢れんばかりの余韻の疼き、ジャズとは一体何なのでしょう。
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投稿者: JAZZCD.JP
レスター・ヤング&テディ・ウィルソン 『プレス・アンド・テディ』 The Lester Young – Teddy Wilson Quartet “Pres and Teddy” 044
こういうのがお聴きになりたいのでしょう? 円熟した晩年のレスター・ヤングと優雅で品のある落ち着いたピアノを披露するテディ・ウィルソンのくつろぎの快演。超絶技巧、革新的なスタイル、研ぎ澄まされた緊張感……とは趣を異にするジャズのうまみ。気楽に味わいましょう、テナーとピアノ、ちょっと大人の遊び心を。ちなみに「PRES」(President:大統領)とはレスター・ヤングの愛称で、ビリー・ホリデイが命名したもの。彼のテナーはアメリカで一番偉大だから。
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ソニー・クラーク 『ソニー・クラーク・トリオ』 Sonny Clark “Sonny Clark Trio” 043
いきなり、たたみかけるピアノの銃弾にやられてしまいます。でも、よく弾むタッチはあなたをむしろ元気にするでしょう。ジャケットの鍵盤も鮮烈に美しい。彼はジャケットに恵まれました。おなじみの#2 “I Didn’t Know What Time It Was” 「時さえ忘れて」、#5 “Softly As In A Morning Sunrise” 「朝日のようにさわやかに」、#6 “I’ll Remember April” 「四月の思い出」も収録されていて親しみやすいアルバムです。彼のピアノは角のとれたまるいトロトロした音色で、どことなく哀愁がありとても魅力的。でも彼は本国アメリカではあまり評価されなかったようです。彼の才能、魅力を理解し、今もってこよなく愛しているのは、日本のジャズファンだと言われています。
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リー・モーガン 『キャンディ』 Lee Morgan “Candy” 042
リー・モーガン19歳にして貫禄すら感じさせるリーダー作。アルバム構成は1曲目にスイーツ、親しみやすい軽快な曲に、じっくり聴かせるバラード2曲を挟み込む。そしてピアノがソニクラ。デクスター・ゴードンの『GO』とよく似た兄弟のようなアルバムとして私はワンセットにしてます。録音年からいくと、こちらの方が先のようです。それにしてもリー・モーガンのトランペットは軽快によく鳴っていて、ソニー・クラークのピアノも華麗で品があります。
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デクスター・ゴードン 『ゴー!』 Dexter Gordon “GO” 041
「GO!」と豪快にブロウする感じが爽快なこのアルバム。でもどこか微妙に陰りの情感を漂せているのがたまらない気分にさせます。ソニー・クラークも合間合間にまるいピアノの音を転がします。#1 “Cheese Cake” というタイトル、おしゃれでしょ? #2 “I Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry”、#5 “Where Are You” のバラードも表現力豊か。#3 “Second Balcony Jump” の最後のキメ、#6 “Three O’Clock In The Morning” のイントロもイカしてます。私、サックス吹きではデクスター・ゴードンが大好き。名前も男らしいし、ルックスも格好よし。えっ、どんな顔かって? 彼の横顔がクールにキマってる名盤『Our Man in Paris』でご確認を。それからジャズ映画『ラウンド・ミッドナイト』でなんと主演もしてます。彼のしゃがれ声、よたよたと歩く姿までジャズなのです。
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