エンリコ・ピエラヌンツィ 『シーワード』 Enrico Pieranunzi “Seaward” 169


エンリコ・ピエラヌンツィ――優美で艶のある演奏をするイタリア人ピアニスト。エヴァンス的なタッチとヨーロッパ的なエレガンスを兼ね備え、「イタリアのビル・エヴァンス」とも称されているそうです。本作はそんな彼の代表的作品で、全体の4分の3が自作曲。中でもアルバムタイトルとなっている#1 “Seaward” が、沖へ揺らめいていく水面(みなも)を思わせ美しい。

このページを読む →


スティーブ・キューン 『オーシャン・イン・ザ・スカイ』 Steve Kuhn “Oceans In The Sky” 168


イマジネイティブなタイトルを即物的な解釈で定着させたこのジャケットはどうなんでしょう? インパクトはありますけど。ケニー・ドーハムの少しもたつくような印象のある#2 “Lotus Blossom” 「ロータス・ブロッサム」が、キレのあるキューンのピアノでアップテンポに開花します。自作の#4 “Do” は内省的なゆらめきとくつろぎに満ちた静謐な佳曲。ミロスラフ・ヴィトウス(b)のサポートもナイス。このアルバムは、アーティスティックな先鋭性とロマンティックな耽美性が絶妙にブレンドされています。

このページを読む →


チック・コリア&上原ひろみ 『デュエット』 Chick Corea & Hiromi “Duet” 167


東京青山にあるブルーノートでのチック・コリアと上原ひろみの二人のピアニストのライブ。終始、向かい合ってにこやかな表情を浮かべる二人の連弾。お互い演奏を心から楽しんでいるよう。チック・コリアが曲の骨子を組み立て、上原がそれに合わせて魅力的なフレーズを繰り出します。巨匠に臆することなくエモーショナルな演奏を披露する上原の集中力は素晴らしい。チック・コリアもさすが大御所といった堂々たる貫禄で存在感を示し続けます。演目は “Summertime”、“Deja vu”、“Spain” など――このライブを収録したアルバムが『Duet』。このスペシャルな夜、会場に居合わせたことに感謝。

このページを読む →


チック・コリア&リターン・トウ・フォエバー 『ライト・アズ・ア・フェザー』 Chick Corea & Return To Forever “Light As A Feather” 166


夏の日差しになれば、やはりこのサウンド――大傑作『Return To Forever』に続くセカンドアルバム。躍動感あふれるリズム陣の巻き起こす風にチック・コリアのエレクトリックピアノ、ジョー・ファレルのフルート、フローラ・プリムのボサノバ風ヴォイスがのります。メロウな(やわらかく美しい)聴き心地のよさがありながら、陶酔するような高揚感もあるのが素晴らしい。そして#6 “Spain”。スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴの「アンフェラス協奏曲」を基調としたチック・コリアの代表曲です。甘く爽やかな飲み口とすっきりとキレのあるシャンパンのような名曲。軽く酔えます。

このページを読む →


鈴木勲 『ブルー・シティ』 Isao Suzuki “Blue City” 165


あの傑作『Blow Up』に続く鈴木勲のリーダーアルバム。#3 “Play Fiddle Play” では演奏にあわせ声でハミングします。声帯もまた楽器。弓で弾かれた弦の音色と重なりあう、その響きの味わい深さ。前作に続き菅野邦彦の鍵盤さばきも軽やかに冴え、若き渡辺香津美のギターが憂いをおびた色彩を添えます。ジャズの格好良さを随所に感じられる鈴木勲のクリエイティビティにしびれます。

このページを読む →