ジャズバーでムーディーに歌う女性シンガー――まさにそんなイメージのジャケットも魅力的な、中本マリ26歳のデビュー盤。すでに成熟したような安定感のある落ち着いた歌唱と、豊かな情感を漂わせるハスキーヴォイス。ピアノトリオに#1 テナー、#5 ギター、#8 フルート、#9 テナー&ギターを加える伴奏も素晴らしい。ブルージーなアルバムの統一感がありながらも、変化をもたせるデビュー盤への行き届いた配慮は、さすがTBMレーベル。宮沢昭のテナーも心地よく響く#1 “Unforgettable” 「アンフォゲタブル」、#7 “But Beatiful” 「バット・ビューティフル」や#9 “After You’ve Gone” 「アフター・ユーブ・ゴーン~君去りしのち」などは、聴くたびに胸が切なくなります。
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カテゴリー: 女性ジャズボーカル名盤
ケイコ・リー 『ライヴ・アット・ベイシー~ウィズ・ハンク・ジョーンズ~』 Keiko Lee “Live at ‘BASIE’ with Hank Jones” 144
ケイコ・リーとハンク・ジョーンズ。岩手のジャズ喫茶「ベイシー」でのライブ録音。聴き馴染みのあるスタンダードの選曲で、深く低い声のケイコ・リーと渋いながらも華やかなピアノのハンク・ジョーンズ(録音時87歳)のくつろぎのライブ。大人のジャズがじっくりと味わえる良盤。
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水谷良重&白木秀雄 クインテット 『真夜中の恋のムード~お休み前の恋人に~』 146
「教えてね。ねぇ、恋の気分を。」――とろけそうなハスキーボイスで誘う昭和ジャズ。ジャケット写真もお色気ムンムン。水谷良重(女優の現・水谷八重子)と白木秀雄(ジャズドラマー)が新婚カップルの共演盤として1960年に制作されたアルバム。アツアツなタイトルもナイスですが、日本語と英語が交じり合う歌詞だけでなく色っぽく囁く台詞まで飛び出すユニークな内容。ムーディなスタンダードにクラクラ……「あぁ、たまらなく幸せ。」
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綾戸智絵 『LIVE!』 Chie Ayado “LIVE!” 195
「聴いときやー!」――ご存知、国民的ジャズシンガー綾戸智絵の2枚組ライブアルバム。[Disc1]が六本木のジャズクラブ「Sweet Basil 139」(300人規模)、[Disc2]が札幌のコンサートホール「キタラ」(2,000人規模)というそれぞれの会場の特色がうまくでたソロライブ録音。
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ビリー・ホリデイ 『レディ・イン・サテン』 Billie Holiday “Lady In Satin” 198
枯淡の味わい。44歳で亡くなったビリー・ホリデイ、晩年の名唱。25歳頃の名盤『奇妙な果実』のまっすぐ届く艶のある高い声とは一変、しわがれた渋い声で歌うしっとりとしたバラッド集です。彼女たっての希望で起用されたレイ・エリスによるストレングスを多用した優美なアレンジも秀逸。ビリー・ホリデイはジャズ歌手としての成功と裏腹に、人種差別、麻薬などに苦しんだ波乱万丈の人生を送ったことでも知られます。本作の静かに淡々と感情をかみ締める歌声に、人生の達観した境地をどうしても感じざるをえません。私はジャズボーカルで1枚選べと言われれば、このアルバムを挙げるでしょう。じっくりと心の奥底のささやき声に耳をかたむけるような、そんな名盤です。
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