エディ・ヒギンズ 『魅惑のとりこ』 Eddie Higgins “Bewitched” 090


洗練された大人の色香――ジャズのジャケットはかくあるべきでしょう。「枯葉」といえば『Portrait in Jazz』でのビル・エヴァンスの名演が思い浮かびますが、このエディ・ヒギンズの曲目を見るとエヴァンスのレパートリーを思わせます。ヒギンズの方がよりテクニカルで、華麗な印象です。そして#13 “Autumn Leaves” 「枯葉」。私はこれをエヴァンス・スクールの一つの完成形としてお勧めします。全体を貫く木枯らしのような疾走感、クラシックのような華やかな格調もあり、枯葉が散る様の描写から恋焦がれる情感の表現まで、極めて完成度の高い名演です。上質なジャズの芳醇な香りを堪能してみては如何でしょう。

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ビル・エヴァンス 『アフィニティ』 Bill Evans “Affinity” 108


秋めいていく黄昏時に最適な一枚。余韻を残しながら広がってゆく美しい叙情性。トゥーツ・シールマンスのハーモニカとビル・エヴァンスのピアノの響きにいささかセンチメンタル、感傷的なきらいあるのですが、不思議と鼻につかないのです。というよりこの絶妙なセンチメンタリズムがこのアルバムの魅力でしょう。こういうアルバムをお探しの方がいらっしゃるのではないでしょうか? ストイックなジャズではちょっと辛いし、イージーリスニングだとちょっと甘いし、みたいな。

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ビル・エヴァンス 『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』 Bill Evans “You Must Believe In Spring” 137


おそらく最も美しいジャズアルバムの一枚――このアルバムはビル・エヴァンスの死後発売され、その内容も、長年連れ添い彼との別れから自殺してしまった恋人へ捧げた#1 “B Minor Waltz (For Ellaine)”、同じく自殺した仲の良かった兄へ捧げた#4 “We Will Meet Again (For Harry)” など、別れにまつわるものに……。ミッシェル・ルグラン作の#2 “You Must Believe in Spring”、美しい旋律に漂う優しさと悲しみ。映画監督ロバート・アルトマンの代表作のテーマ#7 “Theme from M*A*S*H (Suicide Is Painless)” は、光を放つようなピアノの音色が駆け上がっていく至高の演奏、そして訪れる静寂。

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エディ・ヒギンズ 『懐かしのストックホルム』 Eddie Higgins “Dear Old Stockholm” 157


スイングジャーナル誌の読者リクエスト曲による人気ピアニスト、エディ・ヒギンズのスタンダード集。企画、選曲、演奏、全てが素晴らしい。ロマンティシズム薫る数々の曲に魅せらますが、特にラストの#14 “Blame It On My Youth” 「ブレイム・イット・オン・マイ・ユース」。寝かしつけるようなタッチで、夢の中へ……。

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リッチー・バイラーク 『ヒューブリス』 Richard Beirach “Hubris” 193


美しすぎるソロピアノ――『ケルン・コンサート』の次に聴くべきはこれでしょう。1970年代、チック・コリアの『Piano Improvisations Vol.1』から始まったといわれるソロピアノブーム。この表現のひらめきを感じさせる芸術的な傑作に比べるなら、リッチー・バイラークによる本作『ヒューブリス』はみずみずしい情感をたたえた叙情的な名作。何といっても#1 “Sunday Song”。憂いの予感に立ち上がる旋律の美しさ。息を凝らして聴いて、つい溜め息がでてしまいます。全編、憂愁のグレートーンですが、#8 “The Pearl” のほのかな明るさと伸びやかな広がりをみせる演奏もきれい。ラストに再び繰り返される “Sunday Song” のリフレインもアルバムのトータルな印象を強めています。ちなみに彼にはもう一枚よく知られている名盤『ELM』がありますが、こちらの#1 “Sea Priestess” で聴けるのも吹き抜ける風のように清々しい、素敵すぎるピアノです。

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