現在では、ジャズのスタンダードに新鮮な解釈で、新たな息吹を吹き込み続ける、スタンダーズ・トリオとして有名なキース・ジャレット。でも、70年代までの彼は、独創的なオリジナルを中心に演奏していました。本作は、まさにその頃の躍動的なリズム、美しいメロディー、叙情的な雰囲気に包まれたアルバムです。特に#4 “Country” は、ヤン・カバレクの哀愁を帯びたソプラノサックスの音色に、光さすようなピアノの旋律がすばらしく、私は何度聴いたか知れません。
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カテゴリー: 映画にちなんだジャズ名盤
ジャンゴ・ラインハルト 『ジャンゴロジー』 Django Reinhardt “Djangology” 084
とにかく、アーリージャズだからと倦厭しないで聴いてみてください。懐かしく切ないギターとヴァイオリンが奏でる哀愁……たまらないですよ。ジャンゴ・ラインハルトは、父はヴァイオリン弾き、母は歌手で踊り子というジプシーの芸人一家に生まれ、欧州を巡る旅から旅へのキャラバン生活で育ちました。10歳の頃よりパリでミュージシャンと交流が始まり、アメリカのジャズに惹かれギターを志すようになります。キャラバンの火事で左手の指2本が動かなくなるという不幸も克服し、人気を獲得。このアルバムは、ステファン・グラペッリ(ヴァイオリン)など気心知れた仲間とステージ開演前に録音されたものだとか。ヨーロッパ特有の品のあるスウィングを是非お試しあれ。
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デクスター・ゴードン 『アワ・マン・イン・パリ』 Dexter Gordon “Our Man in Paris” 085
ぶっきら棒なテナー、ドラムはせわしなく落ち着かず、バド・パウエルのピアノは何故か弱々しい。でも、妙なアンバランスさと荒削りな演奏は不思議なインパクトで聴かせます。デクスター・ゴードンとバド・パウエルは、50年代に麻薬に苦しみ、60年代のこの時期は共にヨーロッパに身を寄せ、心機一転復活を遂げます。つらい時期を経験したせいでしょうか、このアルバム、聴き込むと何か超越した凄みを感じさせます。#7 “Like Someone in Love” 「ライク・サムワン・イン・ラブ」のテナーなしのボーナストラックはとてもいいんだけど、これってあり?
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デクスター・ゴードン 『ラウンド・ミッドナイト』 Dexter Gordon “Round Midnight” 185
デクスター・ゴードン主演映画『ラウンド・ミッドナイト』のサウンドトラック。映画でもナイトクラブでの演奏シーンが印象深いですが、本作もゆったりしたバラード中心の選曲となっています。夜に似合うJazzyなアルバムとして楽しめます。そして参加ミュージシャンがこれまた豪華。少々挙げますと、デクスター・ゴードン、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、チェット・ベイカー、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズ、フレディ・ハバード、ボビー・ハッチャーソン、ボビー・マクファーリン、ジョン・マクラフリン、シダー・ウォルトン……。パーソネルを確認しながら聴くのも楽しい良盤です。
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山本剛 『オータム・イン・シアトル』 Tsuyoshi Yamamoto “Autumn In Seattle” 191
山本剛が弾く映画音楽――このサービス精神あふれるコンセプト。映画のテーマ曲からの選曲ですが、ジャズのスタンダードとしても良く知られているものばかり。アルバムタイトルにもなっている自作曲#3 “Autumn In Seattle” は映画音楽ではありませんが、これもドラマティックな叙情性をたたえた美しい佳曲。また彼の代表的な演奏曲として知られる#4 “Misty” をアップテンポの新鮮なアレンジで聴かせてくれたり、彼が高校時代に聴いてジャズピアニストを志すきっかけになった#7 “No Problem” など、彼を良く知るファンも十分に聴き応えのある内容となっています。映画とは観客を楽しませてくれたり、夢を見させてくれたり、感動を与えてくれたりするものですが、それがそのまま山本剛の演奏にも通じるという、このアルバムの心にくい演出。ゆったりとした気分で過ごしたいときには欠かせない愛聴盤です。
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