明るく晴れ渡った昼間に突然のスコール――勝手なイメージですが、そんな意外性のある清涼感が鮮烈な印象を残します。スピードとキレのあるチック・コリアのピアノ。トリオのバランスもとても良く、センシティブなニュアンスを濁らせることなく清らかに伝えています。リターン・トゥ・フォーエバーのチックとは違い、少々難解でストイックな感じが否めないですが、私はこのデビュー盤がたまらなく好きです。レコードは5曲のみでしたが、CDでは美しい小品のボーナストラックが沢山追加されています。何度聴いても新鮮な輝きを放つピアノの雨に打たれましょう。
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投稿者: JAZZCD.JP
マイルス・デイビス 『ユア・アンダー・アレスト』 Miles Davis “You’re Under Arrest” 094
ナウい! これ、80年代のキャッチーなポップフィーリング満載なんです。なにせマイルスの格好といったらDCブランドに身を包み、手にはトランペット……ではなくライフルなんですから。一体彼に何があったのでしょう。#1 “One Phone Call / Street Scenes” にはスティングの声が吹き込まれ(高額なギャラでレコード会社ともめ、結局マイルスの自腹に)、選曲もマイケル・ジャクソンの#2 “Human Nature”、シンディ・ローパーの#7 “Time After Time”、シンセや打ち込みサウンドにマイルスのデリケートにかすれるトランペットの音色が絡みます。浮かれたポップサウンドと侮るなかれ、ここには常に革新を続けた「帝王」の気高い志があります。
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ジャッキー・マクリーン 『4,5&6』 Jackie McLean “4, 5 and 6” 093
『4, 5 & 6』――数字が並んだちょっと変わったタイトルは、カルテット、クインテット、セクステット……つまり、曲ごとに編成を変えることを表わしています。このコンセプトももちろん楽しめますが、アルバムの冒頭からジャッキー・マクリーンのアルトの音色にどうしても惹き付けられてしまいます。ジャッキーのアルトには、心をダイレクトに震わせるような情感豊かな響きがあるのです。
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ハンク・モブレー 『ソウル・ステーション』 Hank Mobley “Soul Station” 092
音がいいのです。私が持っているのは、RVGの24-bitのリマスタリング盤なのですが、音の奥行きにはちょっとびっくりします。抜群の録音に相応しく、演奏の方もツヤのある音色がご機嫌に光ります。ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・ブレイキー(ds)の第一級のリズム・セクションをバックに、ハンク・モブレーのテナーがメロディックに響き渡ります。朴訥としていながらも華のある何ともいえない魅力的なフレージングにしびれます。
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サラ・ヴォーン 『枯葉』 Sarah Vaughan “Crazy And Mixed Up” 091
「枯葉の決定的名演は?」と聞かれたら、たぶんキャノンボール・アダレイ『Somethin’ Else』の「枯葉」を挙げるでしょうか。でも、インパクトでいうとある意味こちらが上かも知れません。#3 “Autumn Leaves” 「枯葉」、いわゆるあのサビのメロディーが聴こえてきません。「フェイク」という表現手法で、メロディーをくずして歌っているのです。ハイテンションに駆け抜けるスキャットは、オリジナリティに溢れ、誰も聴いたことのない「枯葉」で圧倒します。最もポピュラーなスタンダードの一つ「枯葉」。何度も何度も演奏され、繰り返し聴かれてきたこの曲から更に新しい魅力を創造し、ジャズの無限の可能性を示したサラの名唱です。
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