夏の日差しになれば、やはりこのサウンド――大傑作『Return To Forever』に続くセカンドアルバム。躍動感あふれるリズム陣の巻き起こす風にチック・コリアのエレクトリックピアノ、ジョー・ファレルのフルート、フローラ・プリムのボサノバ風ヴォイスがのります。メロウな(やわらかく美しい)聴き心地のよさがありながら、陶酔するような高揚感もあるのが素晴らしい。そして#6 “Spain”。スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴの「アンフェラス協奏曲」を基調としたチック・コリアの代表曲です。甘く爽やかな飲み口とすっきりとキレのあるシャンパンのような名曲。軽く酔えます。
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カテゴリー: ▼おすすめ ジャズ名盤 レビュー
チック・コリア&上原ひろみ 『デュエット』 Chick Corea & Hiromi “Duet” 167
東京青山にあるブルーノートでのチック・コリアと上原ひろみの二人のピアニストのライブ。終始、向かい合ってにこやかな表情を浮かべる二人の連弾。お互い演奏を心から楽しんでいるよう。チック・コリアが曲の骨子を組み立て、上原がそれに合わせて魅力的なフレーズを繰り出します。巨匠に臆することなくエモーショナルな演奏を披露する上原の集中力は素晴らしい。チック・コリアもさすが大御所といった堂々たる貫禄で存在感を示し続けます。演目は “Summertime”、“Deja vu”、“Spain” など――このライブを収録したアルバムが『Duet』。このスペシャルな夜、会場に居合わせたことに感謝。
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スティーブ・キューン 『オーシャン・イン・ザ・スカイ』 Steve Kuhn “Oceans In The Sky” 168
イマジネイティブなタイトルを即物的な解釈で定着させたこのジャケットはどうなんでしょう? インパクトはありますけど。ケニー・ドーハムの少しもたつくような印象のある#2 “Lotus Blossom” 「ロータス・ブロッサム」が、キレのあるキューンのピアノでアップテンポに開花します。自作の#4 “Do” は内省的なゆらめきとくつろぎに満ちた静謐な佳曲。ミロスラフ・ヴィトウス(b)のサポートもナイス。このアルバムは、アーティスティックな先鋭性とロマンティックな耽美性が絶妙にブレンドされています。
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エンリコ・ピエラヌンツィ 『シーワード』 Enrico Pieranunzi “Seaward” 169
エンリコ・ピエラヌンツィ――優美で艶のある演奏をするイタリア人ピアニスト。エヴァンス的なタッチとヨーロッパ的なエレガンスを兼ね備え、「イタリアのビル・エヴァンス」とも称されているそうです。本作はそんな彼の代表的作品で、全体の4分の3が自作曲。中でもアルバムタイトルとなっている#1 “Seaward” が、沖へ揺らめいていく水面(みなも)を思わせ美しい。
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オスカー・ピーターソン 『ダフード』 Oscar Peterson “Paris Jazz Concert” 170
2007年12月23日、「鍵盤の皇帝」逝く――このアルバムは「The Trio」と呼ばれたオスカー・ピーターソン・トリオ60年代の絶頂期のライブ録音を集めたもの。#1 “Daahoud” 「ダフード」から驚異的な超絶技巧が炸裂します。指使いは勿論のこと、この速さをコントロールしている脳は一体どうなっているのでしょう。その他にも#6 “Satin Doll” 「サテンドール」や#11 “You Look Good To Me” 「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」など人気ナンバーが楽しめ、演奏の録音状態もよく、また観客の沸く臨場感も味わえます。彼の演奏は聴く人々を幸せにしてくれます。最後となった来日コンサートの思い出は一生の宝です。心よりご冥福をお祈りいたします。
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