ビル・エヴァンス 『アフィニティ』 Bill Evans “Affinity” 108


秋めいていく黄昏時に最適な一枚。余韻を残しながら広がってゆく美しい叙情性。トゥーツ・シールマンスのハーモニカとビル・エヴァンスのピアノの響きにいささかセンチメンタル、感傷的なきらいあるのですが、不思議と鼻につかないのです。というよりこの絶妙なセンチメンタリズムがこのアルバムの魅力でしょう。こういうアルバムをお探しの方がいらっしゃるのではないでしょうか? ストイックなジャズではちょっと辛いし、イージーリスニングだとちょっと甘いし、みたいな。

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チャーリー・ヘイデン&ケニー・バロン 『ナイト・アンド・ザ・シティ』 Charlie Haden & Kenny Barron “Night and The City” 115


チャーリー・ヘイデンのベースとケニー・バロンのピアノが奏でる渋く静謐なデュオ作品。ライブ録音ですが演奏に落ち着きが感じられ、完成度の高いスタジオ録音のよう。ちなみに、ジャケットに使われてる絵はアメリカの女流画家ジョージア・オキーフのもの。秋の夜長にでもゆったりと聴くのにちょうどよい、大人のための味わい深い一枚です。

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大野雄二 『Lupin The Third「Jazz」~Plays The Standards~』 Yuji Ohno Trio “Lupin The Third Jazz ‘Plays The Standards'” 120


「ルパン三世」がジャズの原体験だったのかも――幼い頃に見たTVアニメ「ルパン三世」に流れていたカッコイイ音楽こそ、今だにジャズを憧憬の対象として求めてしまう原点になっているのかもしれません。その「ルパン三世」の音楽を担当したのがジャズピアニストでもある大野雄二。「ルパン三世×ジャズ=大野雄二」の図式が広く定着しており、「LUPIN THE THE THIRD JAZZ」シリーズは人気の証です。その中でもピアノトリオでルパン曲も含むジャズスタンダードに挑んだのが本作。親しみやすい有名曲ばかりのくつろげる演奏なのでジャズビギナーにもおすすめですが、ここからジャズにどっぷりはまってしまうかも。

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ビル・エヴァンス 『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』 Bill Evans “You Must Believe In Spring” 137


おそらく最も美しいジャズアルバムの一枚――このアルバムはビル・エヴァンスの死後発売され、その内容も、長年連れ添い彼との別れから自殺してしまった恋人へ捧げた#1 “B Minor Waltz (For Ellaine)”、同じく自殺した仲の良かった兄へ捧げた#4 “We Will Meet Again (For Harry)” など、別れにまつわるものに……。ミッシェル・ルグラン作の#2 “You Must Believe in Spring”、美しい旋律に漂う優しさと悲しみ。映画監督ロバート・アルトマンの代表作のテーマ#7 “Theme from M*A*S*H (Suicide Is Painless)” は、光を放つようなピアノの音色が駆け上がっていく至高の演奏、そして訪れる静寂。

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大給桜子 『バラード・ナイト』 Ogyu Sakurako “Sakurako Ballad Night” 143


おぎゅう・さくらこ――そう読みます。夭折の女流ジャズピアニスト。#1~4のかつてのレコードA面の流れが素晴らしいですが、特に彼女自作の#3 “Lady Moyo”。ジャケット裏に身をひそめている愛猫の曲で、しなやかな足取りや伸びやかな肢体を描写する演奏に、甘美に魅了されます。ひっそりと弾かれるピアノは彼女の嘘偽りのない感情の囁き。夜の心情に寄り添う音色が美しい。

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