キース・ジャレット 『生と死の幻想』 Keith Jarrett “Death and the Flower” 070


祭り囃子を彷彿とさせるプリミティブな演奏に始まり、スピリチュアルな響きの中で序々にスピードを増し、高揚感とともに絶頂へ――#1 “Death and the Flower” 「生と死の幻想」は奔放さと緻密さを併せ持った完成度の高い傑作です。#2 “Prayer” はチャーリー・ヘイデンとの静謐で繊細な美しさがきらめくデュオ作品。続くドラマティックな多重構造をもつ即興演奏の#3 “Great Bird” で締めくくられるこのアルバム、全編、キースの奇才の鼓動を感じます。次に紹介するのは「メメント・モリ宣言」ともとれるキース自作の詩の一部です。

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ローランド・カーク 『ウィー・フリー・キングス』 Roland Kirk “We Free Kings” 069


まず、ジャケットをよくご覧いただきたい。頑丈そうな黒眼鏡、首からは無数の吹奏楽器をかけ、口には3本のマウスピースを咥えています。その一見奇抜な演奏スタイルは、ジャズに対する旺盛な欲求の純粋なる発露で、彼のアイデンティティそのものです。ユーモアや歌心に溢れた人間味のある演奏は、ストレートに胸に迫り、何よりもバイタリティのあるたくましさが清々しい。#8 “You Did It, You Did It” のうめき声が漏れるほどに激情がほとばしるフルートにしびれます。

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チャーリー・ミンガス 『直立猿人』 Charles Mingus “Pithecanthropus Erectus” 068


「ピテカントロプス・エレクタス」、邦題は「直立猿人」とインパクトのあるタイトル曲#1は、「人類の進化と滅亡」というテーマをフリーキーな即興演奏で野性的に表現しています。ジャッキー・マクリーン、J.R.モンテローズ、マル・ウォルドロンなどのメンバーもそれぞれ強烈な個性をぶつけ合うように発揮していますが、一方で全体的な一体感もあるという逆説的な演奏はユニーク。調和と不調和のせめぎあう緊張感と噴出するようなジャズの生命力に魅せられます。

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マッコイ・タイナー 『フライ・ウィズ・ザ・ウインド』 McCoy Tyner “Fly With the Wind” 067


すごいよ、すごいよ、マッコイ!すっかり私、誤解してました、彼のこと。60年代ジョン・コルトレーンの黄金カルテットの抑制された演奏が、彼の全てだと……。あぁ、熱い、エネルギッシュな彼のパッションが爆発しています。ウィズ・ストリングスというと上品でムーディーな作品を思い浮かべますが、本作はその予想をあっさり裏切ってくれます。縦横無尽に舞い踊る鍵盤にあおられて、ベースやドラムスも息切れしそう。印象的なヒューバート・ローズのフルートとストリングスも一体となり、吹き抜ける風のようなスピード感。もうとにかく、すごい!

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クリフォード・ブラウン 『クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス』 Clifford Brown “Clifford Brown With Strings” 066


彼が交通事故で亡くなる1年半前、24歳で録音されたウィズ・ストリングスの決定盤です。この若さでバラード集、しかもウィズ・ストリングスを吹き込んでくれた重みを噛みしめたいです。せつないトランペットの音色が、ストリングスをバックに輝きます。品のあるプレイでしっとりと歌い上げるスタンダードの名曲の数々、胸に迫ります。

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