マイケル・ブレッカー 『ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック』 Michael Brecker “Nearness of You: The Ballad Book” 060


マイケル・ブレッカー、パット・メセニー、ハービー・ハンコック、チャーリー・ヘイデン、ジャック・ディジョネットとメンバーの顔ぶれが豪華。まさに、オールスターで作られるべくして作られた名盤。でも内容はというと……気負わず、ゆったりとしたバラード集なのが心にくい。シンガーソングライターの大御所ジェームズ・テイラーのボーカル曲#2 “Don’t Let Me Be Lonely Tonight”、#5 “The Nearness Of You” 「ニアネス・オブ・ユー」は、ジャズボーカルっぽくはないですが、やはり味があります。こういう懐の深いアメリカの大陸的な哀愁は、たまらなく魅力的です。

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ノラ・ジョーンズ 『ノラ・ジョーンズ』 Norah Jones “Come Away With Me” 061


ジャズシンガーというよりは、フォーク系シンガーソングライターと紹介する方がしっくりくるノラ・ジョーンズ。このデビュー盤で記録的なセールス(全世界で1800万枚とも言われています※2004年時)を達成します。21世紀の『Tapestry』でしょうか。アコースティックのピアノやギターのシンプルな伴奏に少し低めの優しく落ち着いたノラの声がのります。この独特の彼女の声は、天性のヒーリングボイスでしょう。ジャズ、フォーク、カントリーなどをクロスオーバーし、コンテンポラリーミュージックシーンにおいて、その動向が注目される存在となった彼女。まだまだ、ジャズ界からスーパースターが生まれることを証明してくれた功績は、大きいのではないでしょうか。

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エディ・ヒギンズ 『魅惑のとりこ』 Eddie Higgins “Bewitched” 090


洗練された大人の色香――ジャズのジャケットはかくあるべきでしょう。「枯葉」といえば『Portrait in Jazz』でのビル・エヴァンスの名演が思い浮かびますが、このエディ・ヒギンズの曲目を見るとエヴァンスのレパートリーを思わせます。ヒギンズの方がよりテクニカルで、華麗な印象です。そして#13 “Autumn Leaves” 「枯葉」。私はこれをエヴァンス・スクールの一つの完成形としてお勧めします。全体を貫く木枯らしのような疾走感、クラシックのような華やかな格調もあり、枯葉が散る様の描写から恋焦がれる情感の表現まで、極めて完成度の高い名演です。上質なジャズの芳醇な香りを堪能してみては如何でしょう。

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ブラッド・メルドー 『ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ Vol.3』 Brad Mehldau “The Art Of The Trio, Vol. 3” 097


ジャズ新世代を担うピアニスト、ブラッド・メルドー。彼は意外性のあるロックバンドの楽曲を度々取り上げ、深遠な響きをもつジャズへ仕立てあげます。ここでもレディオ・ヘッドの楽曲#4 “Exit Music (For a Film)” が素晴らしい仕上がり。アルバムの半分は彼のオリジナル曲で、メランコリックなミディアムナンバーが、繊細で静謐な世界を構築しています。自筆によるライナーノーツにも、彼なりのこだわりが表れていて何とも頼もしい。

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上原ひろみ 『ブレイン』 Hiromi “Brain” 113


カンフー×ジャズ。なんとジャッキー・チェンとブルース・リーにインスパイアされて作られたという#1 “Kung-Fu World Champion”。超絶技巧を駆使し目にも止まらぬスピードで電子キーボード・ファイティング。ユニークなイマジネーション&クリエーションに度肝を抜かれます。#6 “Green Tea Farm” は故郷の静岡の茶畑をテーマに日本情緒を感じさせる佳曲。その他にも#2 “If…”、#3 “Wind Song” など晴れゆくような美しいフレーズが横溢するメロディックなアルバムです。

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